花火の匂いのする帰り道


ほら
歓声が遠のいて
花火の匂いだけが
来年のこの時期まで
記憶の底にしまっておかれる

お気に入りの赤いサンダルは
やがて履かなくなるだろう
終わって欲しくないけれど
消えてしまうものの息づかいを
気づいていても知らん顔して

さっきまで笑っていたことも
まるで昨日の夢のよう
記憶をさぐれば
きっといつかは辿り着く
けれど今はまだ
五感に頼るしかない夜

花火の匂いのする帰り道
おもいっきり息を吸い込んで
闇に溶け込んだふりをして

明日で夏が終わること、わかっている





つめとぎ

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