白い花


ある白い花を あの人は好きだと言った
私はその花の名前をこころにとめておいて
いつか その花束を
あの人にプレゼントしようと思った

花の名前からいろんな物語を想像しては
どうしてあの人がそれを好きになったのか とか
それはいったいどんな花なんだろう とか
のみこみたくないドロップみたいに
ころころころころ夢想した

私の母親は花が好きで
庭には数々のプランターがあった
私は ある日 耐えきれなくなって
その白い花のことを母に問うた

数日後
母はその白い花を買ってきて花瓶にさした
私は これがあの人の好きな花なのだと
ちょっぴりくすぐったい気がしながら眺めた
想像以上に ぱっとしないところが
あの人らしくて 可笑しかった

数年後
あの人は近くにいなくて
私も忘れて過ごすころ
私が気にとめた花だとばかり思って 母は
そのことを忘れずにいて
白い花を庭に植えた

風に揺られてその花は
優しいぶんだけ淋しくて



つめとぎ

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